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対岸 / 壱タカシ
作詞・作曲:壱タカシ


今 どこ
枯れ葉の音
転がる
この街角
電車に
間に合ったの
タバコが
燃え尽きそう

聞こえてるか
聞こえてるか

応えてくれるまで
また待ちぼうけ
夜更けに彷徨うメロディー

今どこ
扉の向こう
くぐもる
声がするの
なんだか
懐かしいけど
そこには
入れないよ

もどかしいな
もどかしいな

開いてくれるまで
また待ちぼうけ

僕らは退屈で
朝まで
踊るしかなくて
今のあなたなら
理由がわかるかな

今どこ
電車のホーム
それとも
通りの向こう
僕 まだ
帰らないよ
応えは
いつかきっと

きっとわかるわ
きっとわかるわ

楽曲解説

 東京で暮らし始めてから、もう14年が経とうとしています。

 私が上京を決意したのは小学校5年生のときです。今でこそ地元に愛着を持っていますが、当時は漠然と故郷の街を退屈だと感じていたことを覚えています。 進路を選択する時期になると迷うことなく東京の大学を志望し(正確には神奈川でしたが)、いざ上京した時にはやっと故郷を出られたという達成感がありました。しかし、新しい環境に対する期待感はそれほどなく、以来都会に住んでいるということに無頓着なまま過ごしてきたような気がします。

 それでも今まで自分が書いたラップのリリックを見返してみると、新宿とか中央線といったワードが出てきていて、それなりにこの街の雰囲気をキャッチして表現しているのがなんだか不思議な感じがしています。それは無意識的にやっていたことだったのですが、ちょうど「対岸」の原型となるコード進行を練っていた時に、個人的に大きな出来事があり、少し感情的に揺さぶられたことがありました。そこで、今度は意識的に今の環境にいる自分を俯瞰的に見つめ直してみたくなりました。シティポップが一部でトレンドになっていますが、この曲は今の私なりに大都会の中で生きることを見つめ直した、シティポップと言えるかもしれません。 ループミュージックの要素を意識的に取り入れましたが、その無機質さに対比させるように少しだけ感情的なシークエンスを盛り込みました。

 システマティックな日常と、密集して生活する多くの人々の魂が蠢くカオスの中で、自分がこれからどんな人生を歩むことになるのかわかりませんが、今作のように時々音楽で記録することができたら、と思います。

 前々作、前作に引き続き録音とマスタリングで協力していただいた、すさきふみおさん。ジャケットアートワークに写真を提供していただいたTapioさん。そして今作でレビューを書いていただいた美馬渡さん、ありがとうございます。

 そして、2019年の秋に三曲を連続でリリースするとアナウンスしてから協力していただいた沢山の方々、聴いていただいた沢山の方々に、改めて感謝の意を表します。三曲通して、音楽面でも歌詞の面でも、私の人生を切り取った手記のような仕上がりになってしまいましたが、それでも何かを感じてくれたりしたら、とても嬉しいです。あなたと私を繋げる特別な媒体として、音楽には力があるとこれからも信じて、生きている間は創作を辞めないでいきたいと思います。
壱タカシ

REVIEWS

美馬渡による
楽曲レビューはこちら

思い出した応えのこと-壱タカシ「対岸」に寄せて
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