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はなむけ / 壱タカシ
作詞・作曲:壱タカシ


花の匂いが
移り変わっても
僕はここにいた

外は晴れ
あなたが
雨を連れて行った

目を瞑ると
あなたの声が
あなたの匂いが

片付いた
部屋に ふわり
蘇るようだ

夕焼け空漂って
なにを待ち続けるの
淡い光が映した
あなたの姿

さようならと
言われたわけじゃない
だけどわかった

僕は鳥
あなたは雲
行っておいでよ

月の明かりぼやかして
星に何を願うの
淡い光が映した
あなたの姿

花の匂いを
僕に送ってよ

楽曲解説

 この曲を作る時、やけに苦悩したことを覚えています。

 探しものをする感覚に近かったと思います。小さいころと比べてだいぶマシになりましたが、私はよくものをなくします。
本当は作曲とは、片付けをするような感覚でするのが理想だと思います。だけどこの曲を作るまえに、私は自分が大切なものをなくしたような気がしたのです。

 何度も記憶をたどるように、私はピアノを弾き、コードを探りました。そうして見つけようとしたのです。かつて出会ったものが、頭の中から消えてしまうのは悲しいから、必死に手繰り寄せて、もう一度会おうと思ったのです。

 結局のところ、見つかったのかどうかは自分でもわかりません。いたる所を散々引っ掻き回したせいで、半分ほど書き上げた時には部屋は散らかり放題。私は仕方なしに片付けをすることにしました。

 しばらく作曲のことは忘れ、整理整頓、断捨離に没頭しました。

 そうしてやっとのことで片付けた部屋を見渡すと、不意に開け放した窓から舞い込んだ風が、むき出しになった床を撫でました。埃の塊が転がります。
私はふと思いました。

 もう、探さなくてもいいのかもしれない。

 私はそのまま床掃除に移る前に、すべてのコード進行を書き上げました。
家具と家具の隙間を縫うように、メロディーをつけました。苦悩した記憶を反芻しながら、歌詞を書き上げました。

 そうして出来た曲をコンピュータに録音して聴いてみた時、今まで自分が作ってきたものとは少し違う印象を受けました。
初めて作曲という行為をしたのは14歳の時ですが、あの時の達成感に似たなつかしい匂いが私の中に漂いました。

 私はこの曲が自分にとって大切な曲になる気がして、ピアノの伴奏と自分自身の歌唱だけで、さらに、いままで培ってきたコンピュータ音楽における打ち込みのノウハウをあえて使わずに、31歳の私の、生身で丸裸の音楽を記録したくなりました。

 こうして壱タカシの最初の一曲「はなむけ」は生まれました。不慣れな弾き語りに挑戦して、シンガーソングライターをやってみようと思ったのは、この曲がきっかけです。

 ここまで形にするのにたくさんの方にご協力をいただきました。
録音とマスタリングで協力していただいたすさきふみおさん、アーティスト写真を撮影していただいた宮本七生さん、ジャケットアートワークに写真を提供していただいたTapioさん、ホームページ制作に協力していただいたZHYAN PAAKさん、山崎宜久さん。レビューを書いていただいた藤緒恭平さん。

 皆さんに出来上がった曲を聴いていただき、快く協力していただき、コンテンツを共に作っていく中で、創造することの無上の喜びを感じられてとても幸せです。感謝の意を表します。

 ここに、成果物として皆様に私の音楽を共有したいと思います。皆様一人一人の人生に寄り添うような曲になっていますように。
壱タカシ

REVIEWS

藤緒恭平による
楽曲レビューはこちら

行間を漂う音楽 壱タカシ「はなむけ」に寄せて
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